· 薬剤師たけすた · 健康 · 19 min read
トクホと機能性表示食品の違い|消費者庁資料をもとに薬剤師が解説
「特定保健用食品(トクホ)」と「機能性表示食品」、どちらも健康に良さそうに見えて、実は国の審査レベルが全然違います。薬剤師として消費者庁の制度を読み解きます。
スーパーやドラッグストアで「トクホ」「機能性表示食品」のマークが付いた商品を見かけます。 どちらも「国が認めた健康食品」のような印象を受けますが、審査のレベルは大きく違います。
薬剤師として、制度の中身を理解したうえで商品を選ぶことをすすめています。
日本の「保健機能食品」制度の全体像
日本では食品に「健康への機能」を表示できる制度として、消費者庁が「保健機能食品制度」を整備しています。この制度は大きく3つのカテゴリに分かれており、さらにどの制度にも該当しない「一般食品(いわゆる健康食品)」が存在します。
制度の3つのカテゴリ
- 特定保健用食品(トクホ): 消費者庁が個別に審査を行い、有効性・安全性を確認したうえで許可を与える食品
- 機能性表示食品: 事業者が消費者庁に届出を提出し、自己責任のもとで機能性表示ができる食品(国が内容を審査するわけではない)
- 栄養機能食品: ビタミン・ミネラルなどについて定められた基準値を満たせば、届出なしで決まった文言を表示できる食品
この違いをひとつの表で整理すると、次のようになります。
| 区分 | 国の審査・許可 | 表示できる機能 | 審査期間目安 |
|---|---|---|---|
| 特定保健用食品(トクホ) | ◎ 消費者庁が個別許可 | 「〜に役立つ」など機能性表示可 | 数年〜 |
| 機能性表示食品 | △ 届出のみ(審査なし) | 機能性表示可(届出資料が根拠) | 60日届出 |
| 栄養機能食品 | × 届出不要・基準値クリアのみ | ビタミン・ミネラル等の決まった文言のみ | — |
| 一般食品(健康食品) | × 審査なし | 健康効果は表示不可 | — |
この表からわかるように、同じ「健康食品」という括りでも、国の関与レベルは制度によって大きく異なると考えられています。
トクホ(特定保健用食品)とは
特定保健用食品(トクホ)は、消費者庁が個別に有効性・安全性を審査し、許可を与えた食品です。許可を受けた製品には「許可証票(トクホマーク)」が表示されます。
審査の特徴
トクホの許可を受けるためには、実際に人体で行った臨床試験のデータを含む有効性・安全性の根拠資料を消費者庁に提出し、専門家による審査を受ける必要があります。審査には数年規模の期間がかかるとされており、費用・時間の負担が大きいため、大企業の製品が多い傾向があります。
許可品目数は2020年代時点で約1,000品目とされており、消費者庁のウェブサイトで一覧を確認することができます。
重要な注意点
「トクホ許可を受けている=薬と同等の効果がある」わけではありません。トクホは「健康食品の中で、機能性に関する根拠が審査を通った食品」という位置づけです。あくまで食品であり、医薬品ではないという点を正しく理解することが大切だと考えられています。
また、過去に許可を受けた製品が何らかの理由で自主撤退・取り消しとなったケースも存在します。許可を受けていることは安全性の絶対的な保証ではなく、「審査時点で一定の根拠が確認された」という意味であることを念頭に置いておく必要があると考えられます。
機能性表示食品とは
機能性表示食品は2015年に新設された制度です。事業者が消費者庁に届出を提出することで、機能性に関する表示ができるようになります。
最大の特徴は「届出のみ」
トクホとの最大の違いは、国が内容を審査するわけではないという点です。事業者が自ら根拠資料を用意し、消費者庁に届出を提出するだけで表示が可能になります。届出内容が正確かどうか、根拠が十分かどうかは、事業者の自己責任となっています。
届出の根拠資料には2種類があります。
- 研究レビュー(文献調査): 過去の学術論文をまとめて、機能性関与成分の効果を示す
- 臨床試験: 実際に人を対象とした試験を実施し、その結果を根拠とする
なお、届出された内容は消費者庁の「機能性表示食品届出データベース」として一般に公開されており、誰でも無料で確認することができます。
制度を巡る課題について
2024年に、機能性表示食品を巡って制度の課題が社会的に注目される出来事がありました。これにより、機能性表示食品の届出制度における事業者の自己責任の範囲や、行政の関与のあり方について議論が進んでいます。
この経緯からも、「機能性表示食品=国が安全を保証している食品」という誤解は持たないようにすることが重要です。届出がなされているということは、消費者庁のデータベースで根拠資料を一般公開しているということでもありますので、購入前に自分で確認する習慣を持つことが大切だと考えられます。
薬剤師が機能性表示食品を確認するときのポイント
では実際に、どのように機能性表示食品を評価すればよいのでしょうか。薬剤師として活用している消費者庁のデータベースの使い方をご紹介します。
消費者庁 届出データベースの活用
消費者庁の公式サイト「機能性表示食品の届出情報検索」から、誰でも無料で届出情報を検索することができます。製品名や機能性関与成分名で検索し、届出資料の概要を確認することが可能です。
確認するポイントは主に3つです。
① 届出表示(実際に許可されている文言)
パッケージに書かれた機能性の表現と、届出書類に記載された届出表示が一致しているかを確認します。法律上、表示できる内容は届出を通じて認められた範囲に限られています。
② 安全性の根拠
届出資料の中で、安全性をどのような根拠で示しているかを確認します。「食経験による評価」「研究レビュー」「臨床試験」のいずれかが記載されており、根拠の質が製品によって異なる場合があります。
③ 機能性関与成分とその研究量
機能性表示食品に含まれる「機能性関与成分」がどの成分で、それに関する研究がどのくらい蓄積されているかを確認します。研究論文の数が多く、複数の臨床試験で再現性が確認されている成分ほど、信頼性が高いと考えられます。
栄養機能食品とは
栄養機能食品は、3つのカテゴリの中で最もシンプルな制度です。
ビタミン(A・B群・C・D・Eなど)やミネラル(カルシウム・鉄・亜鉛など)について、消費者庁が定めた含有量の基準値を満たしていれば、届出も審査も不要で、定められた文言を表示することができます。
表示できる内容の制限
表示できる文言は法律で決まった定型文のみです。例えば「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」のような、あらかじめ定められた表現しか使えません。自社製品の特徴を訴求するような独自の機能表現はできません。
また、過剰摂取や不足した場合の注意表示も義務付けられており、含有量が多すぎる場合の注意書きなども必要です。
栄養機能食品は「特定の栄養素をしっかり摂りたい」という目的には合理的な選択肢のひとつと考えられますが、「特定の健康効果を得たい」という場合にはトクホや機能性表示食品の根拠を確認するほうが適切と考えられます。
よくある質問
サキさんトクホマークが付いているなら、絶対に安全なんですよね?
薬剤師たけすた消費者庁の審査を通ったということは、「一定の有効性・安全性の根拠が確認された食品」という意味では信頼性が高いと言えます。ただし、「薬と同じレベルの有効性が証明された」わけではなく、「健康食品の中では根拠が明確に審査された」という位置づけです。
また、食品であっても特定の薬を服用中の方や持病のある方は、成分によって相互作用が生じる可能性が考えられます。トクホ製品を選ぶ際も、薬を服用されている方はあらかじめ医師や薬剤師にご相談されることをおすすめします。
ケンジさん機能性表示食品は届出だけなら、信用できないということですか?
薬剤師たけすた「届出のみ=全て信用できない」というわけではありません。届出資料の中に、質の高い臨床試験データが含まれている製品も存在します。
重要なのは、消費者庁の届出データベースで根拠を自分で確認することです。「どんな実験で・誰を対象に・どんな結果が出たか」を見ることで、その製品の機能性表示の根拠の厚みを判断する材料になります。全ての製品が同じ品質ではないからこそ、マークを信じるだけでなく中身の根拠を確認する習慣が大切だと考えています。
サキさん結局、薬剤師さんはトクホや機能性表示食品をどう評価していますか?
薬剤師たけすた「食品として継続して摂取しながら健康維持を図る」という用途においては、合理的な選択肢のひとつだと考えています。ただし、「病気を治す」「薬の代わりになる」という使い方は制度上も効果の面でも誤解であり、あくまで食品の範囲内での話です。
選ぶときは届出データベースや消費者庁の公式情報で根拠を確認し、機能性関与成分の研究量・臨床試験の質を見てほしいと思います。「マークがあるから安心」より「中身の根拠を確認してから選ぶ」習慣を持つことが、長期的に見て賢明な判断につながると考えています。
ケンジさん一般の「健康食品」とトクホの一番の違いは何ですか?
薬剤師たけすた最大の違いは「機能(効果)に関する表示ができるかどうか」です。
一般の健康食品は「〇〇に良い」「〇〇を改善する」といった機能に関する表示を法律上することができません。こうした表示は薬機法(旧薬事法)違反になる可能性があります。一方、トクホや機能性表示食品は、正式な手続きを経ることで機能性表示が許可されています。
パッケージに「〇〇の機能があります」という表示がある食品は、何らかの保健機能食品の制度に該当しているはずです。その根拠がどの制度に基づいているかを確認することが、健康食品を正しく選ぶための第一歩だと考えています。
まとめ
- 保健機能食品はトクホ(消費者庁が個別許可)・機能性表示食品(届出のみ)・栄養機能食品の3種類がある
- トクホは国の厳格な審査があり、有効性・安全性の根拠が確認されている
- 機能性表示食品は届出のみで国は内容を審査しない——消費者庁の届出データベースで根拠を自分で確認することができる
- 「マークがあるから安全・効く」は誤解。制度の仕組みを理解し、中身の根拠を確認する習慣を持つことが重要
- 薬を服用中の方や持病のある方は、健康食品でも医師・薬剤師へ相談することをおすすめする
食品の表示や制度についてご不明な点があれば、かかりつけの薬剤師にご相談ください。薬剤師は薬だけでなく、健康食品や栄養に関する相談にも応じることができます。
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