· 薬剤師たけすた · 薬剤師の本音 · 27 min read
腸内細菌と体重の関係|薬剤師が現時点で言えることを整理
「やせ菌」「太る菌」という言葉を見かけて、自分の体重も腸内細菌のせいなのか気になっている。研究で分かってきたこと、まだ分かっていないことを分けて、今の段階でできることを薬剤師が整理しました。

食事の量は変えていないのに、体重がなかなか落ちない。SNSで「やせ菌を増やせば太りにくくなる」という広告を見て、自分の腸内細菌に原因があるのではと気になっている。そんな方に向けて書きました。
サキさん太りやすい人と太りにくい人って、腸内細菌が違うって本当ですか?もしそうなら、菌を変えれば体重も変わるのかなって。
薬剤師たけすた腸内細菌と体重に関係がありそうだ、という研究は実際にあります。ただ、どこまで分かっているかは研究の段階ごとに違うので、そこを分けて見ると広告に振り回されにくくなります。
結論を先にお伝えします。
腸内細菌と体重のあいだに関係がありそうだ、というところまでは研究で見えてきています。ただ、特定の菌を足せば体重が落ちる、と言える段階にはまだありません。この記事では、研究がどこまで進んでいるかを3つの段階に分け、今の時点で言えること・まだ言えないことを整理します。最後に、今の段階でできることの順番をまとめます。
私が腸活を続けてきた理由
腸活と体重の話に入る前に、私がふだん何をしているかを少しだけお伝えします。
薬剤師たけすた私は腸活を10年続けています。もち麦ごはんと整腸剤を中心に、食物繊維を意識した食事を習慣にしてきました。食事の時間は、朝食をとらない16時間ファスティングの形にしています。
薬剤師たけすた腸活を始めたのは、薬剤師として病気や薬、健康のことを勉強するうちに、健康の根本は腸にあると考えるようになったからです。腸内細菌が作る短鎖脂肪酸が、食欲を抑えるホルモン(GLP-1)とつながっていると知ったことも大きかったです。
最近は「やせ菌」という言葉を広告で見かけることも増えました。気になっている方のために、研究で分かっていることを順番に整理します。
研究はどこまで進んでいるか|3つの段階で見る
腸内細菌と体重の研究は、大きく3つの段階に分けて見ると整理しやすくなります。段階が進むほど、人の体で確かめられた度合いが高くなります。

| 段階 | 何をした研究か | 分かってきたこと |
|---|---|---|
| 1. マウスの実験 | 菌を持たないマウスに 腸内細菌を移す | 移した菌によって 体の脂肪のつき方に差が出た |
| 2. 人の観察研究 | 体型の違う人の 腸内細菌を比べる | 違いはあるが 研究ごとに結果がそろわない |
| 3. 人の試験 | 菌や便を実際に 人に入れて確かめる | 体重の差は小さいか 見られないものが多い |
段階1:マウスでは、はっきり差が出た
この分野が注目されたきっかけは、マウスの実験です。太ったマウスの腸内細菌を、菌を持たないマウスに移したところ、やせたマウスの菌を移した場合より体の脂肪が多く増えたと報告されました。
出典:Turnbaugh PJ ほか, Nature誌 444巻, 2006年「An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest」(肥満マウスの腸内細菌を移す実験)その後、体型の違う双子の便を使った実験も行われました。太っている側の腸内細菌を移したマウスは、やせている側の菌を移したマウスより脂肪が増えたと報告されています。
出典:Ridaura VK ほか, Science誌 341巻, 2013年「Gut microbiota from twins discordant for obesity modulate metabolism in mice」(体型の違う双子の腸内細菌をマウスに移した研究)段階2:人では、関係は見えるが結果がそろわない
人を対象にした研究でも、太っている人とやせている人で腸内細菌の顔ぶれに違いがあると報告されました。よく紹介される「ある菌のグループの比率が体型と関係する」という話は、この頃の研究から広まったものです。
出典:Ley RE ほか, Nature誌 444巻, 2006年「Human gut microbes associated with obesity」(肥満の人の腸内細菌の構成を調べた研究)ところが、その後に複数の研究をまとめて見直すと、その比率と体型の関係は研究ごとにばらつきが大きく、はっきりした共通点は見つけにくいと報告されています。
出典:Sze MA・Schloss PD, mBio誌 7巻, 2016年「Looking for a signal in the noise: revisiting obesity and the microbiome」(肥満と腸内細菌の研究を再解析した報告)
ケンジさんじゃあ「太る菌」「やせ菌」っていうのは、まだはっきりしていないってことですか?
薬剤師たけすたそう考えておくのが今は安全です。体型と関係がありそうな菌の候補はいくつも挙がっています。ただ、「この菌がいれば太りにくい」と決められるほどには、人の研究の結果がそろっていません。
段階3:人で確かめる試験は、まだ途中
実際に菌を人に入れて、体重が変わるかを確かめた試験もあります。
生きた菌を取り入れるもの(プロバイオティクス)を、太り気味の方に使った試験をまとめた解析では、体重の差は平均で1kgに満たない小さなものでした。
出典:Borgeraas H ほか, Obesity Reviews誌 19巻, 2018年「Effects of probiotics on body weight, body mass index, fat mass and fat percentage in subjects with overweight or obesity」(ランダム化比較試験をまとめた解析)最近注目されている菌の1つに、アッカーマンシア(Akkermansia muciniphila)があります。人で試した試験はありますが、参加者が数十人の小さな試験で、安全性や血液の指標を調べた段階です。
出典:Depommier C ほか, Nature Medicine誌 25巻, 2019年「Supplementation with Akkermansia muciniphila in overweight and obese human volunteers: a proof-of-concept exploratory study」(太り気味の人を対象にした小規模な探索的試験)健康な人の便から作ったカプセルを、太っている人に飲んでもらう試験(便移植)も行われました。腸内細菌の顔ぶれは変わったものの、体重には差が見られなかったと報告されています。
出典:Yu EW ほか, PLOS Medicine誌 17巻, 2020年「Fecal microbiota transplantation for the improvement of metabolism in obesity: The FMT-TRIM double-blind placebo-controlled pilot trial」(肥満の人を対象にした便移植の予備的な試験)マウスで見えた大きな差は、人の試験ではまだ同じようには確かめられていない。これが今の研究の現在地です。
腸内細菌が体重に関わるとされる仕組み
それでも研究が続いているのは、腸内細菌が体重に関わりうる道すじが、いくつか考えられているからです。どれも研究が進んでいる途中の考え方として読んでください。
| 考えられている道すじ | 中身 |
|---|---|
| 食べ物から取り出す エネルギーの量 | 人が消化できない食物繊維などを、菌が分解してエネルギーに変える。菌の顔ぶれで、その量が変わる可能性がある |
| 食欲に関わる ホルモン | 菌が食物繊維から作る有機酸(短鎖脂肪酸)が、食欲を抑える方向に働くホルモン(GLP-1)の分泌に関わるとされる |
| 体の中の 小さな炎症 | 腸の壁の状態や菌の顔ぶれが、体の中の小さな炎症を通して代謝に関わる可能性が研究されている |
2つ目の短鎖脂肪酸とGLP-1の関係は、主にマウスや細胞を使った研究で示されたものです。
出典:Tolhurst G ほか, Diabetes誌 61巻, 2012年「Short-chain fatty acids stimulate glucagon-like peptide-1 secretion via the G-protein-coupled receptor FFAR2」(短鎖脂肪酸とGLP-1の分泌の関係を調べた研究)GLP-1は、肥満症などの治療薬や、自由診療で体重を目的に使われる注射で名前を聞くことが増えたホルモンです。腸内細菌が作る成分と同じ名前が出てくるので混同されやすいのですが、注射の薬は、体の中で作られるGLP-1より長く強く働くように設計された医薬品です。注射について気になる方は、GLP-1注射の前に知っておきたい3つのことにまとめています。
薬剤師たけすた腸内細菌が作る成分とGLP-1がつながっているのは、とても興味深い仕組みです。ただ、仕組みがあることと、それで体重が変わることは、分けて考えるようにしています。
現時点で言えること・まだ言えないこと
ここまでの研究を、言えること・まだ言えないことに分けて整理しました。

| よく聞く話 | 今の段階 | 理由 |
|---|---|---|
| 腸内細菌と体重には 関係がありそう | ◯ | マウスの実験と人の観察研究の両方で、関係を示す報告がある |
| 食べ物で腸内細菌の 顔ぶれは動く | ◯ | 食事を切り替えると、数日のうちに菌の構成が変わったと報告されている |
| 同じ食事でも 体の反応は人によって違う | ◯ | 食後の血糖の上がり方に個人差があり、腸内細菌もその一因と考えられている |
| 「やせ菌」が 特定されている | △ | 候補の菌はあるが、人の研究で結果がそろっていない |
| 菌のサプリで 体重が落ちる | △ | 人の試験では差が小さいか、見られないものが多い |
| 太っているのは 腸内細菌のせい | △ | 体重は食事の量・運動・睡眠・薬・体質など多くの要因で決まる。腸内細菌はその1つの候補にとどまり、これだけが原因とは言えない |
食事で腸内細菌が数日のうちに動くことは、動物性の食品が中心の食事と植物性の食品が中心の食事を切り替えた実験で報告されています。
出典:David LA ほか, Nature誌 505巻, 2014年「Diet rapidly and reproducibly alters the human gut microbiome」(食事の切り替えによる腸内細菌の変化を調べた研究)同じ食事でも食後の血糖の上がり方が人によって違うことは、イスラエルの800人を対象にした研究で示されました。この研究では、腸内細菌の情報も使って反応を予測しています。
出典:Zeevi D ほか, Cell誌 163巻, 2015年「Personalized Nutrition by Prediction of Glycemic Responses」(食後血糖の個人差と腸内細菌を調べた研究)「やせ菌」の広告を見たときの見方
腸内細菌と体重の話は、研究より先に広告の言葉が広まりやすい分野です。気になる商品を見かけたら、次の点を確かめてみてください。
✅ 「やせ菌」「太る菌」と、菌を2つに分けて言い切っていないか
✅ 根拠として出しているのが、マウスの実験だけになっていないか
✅ 人の試験なら、何人を対象にどのくらいの期間調べたかが書かれているか
✅ 「飲むだけ」「食べるだけ」と、食事や生活を変えなくてよいような言い方をしていないか
✅ 定期購入の条件や解約の方法が、分かりやすく書かれているか
お腹の脂肪などを表示した機能性表示食品もあります。機能性表示食品は、事業者が自らの責任で根拠を消費者庁に届け出る仕組みで、国が個別に審査して許可したものとは違います。届け出の内容は、消費者庁のデータベースで誰でも確認できます。
出典:消費者庁「機能性表示食品について」(2026年10月閲覧)原材料表示の読み方など、商品を見るときの基準は怪しい健康食品を見抜く5つの基準にまとめています。
今の段階でできること|順番で考える
研究が途中だからといって、腸内細菌のことを考えなくていいわけではありません。腸内細菌は食べ物で動くので、毎日の食事が一番の手がかりになります。

- 急な体重の増減やむくみ、だるさなどがあれば、先に受診する
- 飲んでいる薬があれば、体重に関わるものがないか薬剤師に聞く
- 食物繊維と水分を、毎日の食事で無理なく足す
- 睡眠と食事の時間をそろえる
- それでも気になることが残ったら、医師や管理栄養士に相談する
2つ目は、薬局でぜひ使ってほしいところです。薬の中には、体重が増えやすくなるものもあります。自己判断でやめるのは危険なので、気になったら処方した医師か薬剤師に相談してください。
3つ目の食物繊維は、腸内細菌のエサになる成分です。白米をもち麦に一部置き換えるだけでも、意識せずに量を足せます。ただし、医師から水分や食物繊維を控えるよう言われている方は、その指示を優先してください。
薬剤師たけすた私も薬局では、白米をもち麦ごはんに変えることを強くすすめています。g当たりの水溶性食物繊維が多いからです。毎日食べているものを少し変えるだけで、食物繊維の量を足せます。
私が毎日回している腸活の中身は、薬剤師が10年続けている腸活習慣にまとめています。
薬剤師としての本音
正直に言うと、腸内細菌と体重の研究は、これから人で確かめられることが増えていく分野だと見ています。マウスで見えた差が大きかったぶん、人の試験の結果がこれから大事になります。
薬剤師たけすた今の段階で「この菌を足せば体重が落ちる」と期待してお金をかけるのは、まだ早いと考えています。人の試験の結果を見る限り、菌だけで体重が大きく動くという報告は見当たらないからです。
薬剤師たけすた体重が気になって腸活を始めるのは、悪いきっかけではないと思います。体重の数字だけで良し悪しを決めず、便の回数や形など、ふだんのお腹の調子も一緒に見てもらえたらうれしいです。
よくある質問
ケンジさん腸内細菌の検査を受ければ、太りやすい体質かどうか分かりますか?
薬剤師たけすた今の検査では、そこまでは分かりません。「この割合なら太りやすい」という共通の基準が、まだ決まっていないためです。検査で分かることの範囲は、腸内細菌の検査は受ける意味があるかで整理しています。
サキさんヨーグルトや乳酸菌のサプリを続ければ、体重も変わりますか?
薬剤師たけすた体重の変化は小さいと考えておくのが現実的です。上で紹介した試験のまとめでも、体重の差は平均で1kgに満たないものでした。体重のためにサプリを足すより、ヨーグルトなどは食事の一部として、好みに合うものを選ぶくらいで十分だと考えています。
ケンジさん痩せている人の便を移す治療があると聞きました。日本でも受けられますか?
薬剤師たけすた体重を目的とした便移植は、一般的な治療としては行われておらず、海外で研究として試されている段階です。肥満の人を対象にした試験では、体重に差は見られなかったと報告されています(Yu EW ほか, PLOS Medicine誌, 2020年)。自由診療などで勧められても、すぐに決めずに主治医に相談してください。
サキさん腸活をしても体重が変わりません。続ける意味はありますか?
薬剤師たけすたあると考えています。腸活の目的を体重だけに置くと、続ける理由を見失いやすくなります。体重の数字だけでなく、ふだんのお腹の調子も合わせて気にかけてみてください。
まとめ
- 腸内細菌と体重に関係がありそうだ、というところまでは研究で見えてきている
- マウスでは大きな差が出たが、人の観察研究では結果がそろわない
- 菌のサプリや便移植で体重が変わるかを確かめた人の試験では、差は小さいか、見られないものが多い
- 「やせ菌」の広告は、根拠がマウスだけでないか、人の試験の人数と期間が書かれているかを確かめる
- 今できるのは、受診や薬の確認をしたうえで、食物繊維と水分・睡眠・食事の時間をそろえること
腸内細菌と体重の研究は、まだ答えが出ていない分野です。だからこそ、広告の言葉より先に、毎日の食事に目を向けてもらえたらと思います。
腸内細菌は、食べたもので少しずつ動きます。体重の数字だけでなく、お腹の調子の変化も一緒に見ていくと、腸活は長く続けやすくなります。



