· 薬剤師たけすた · 健康 · 23 min read
便秘に薬を使う前に試したい順番|薬剤師の自宅対処マップ
「便秘薬を買いに来ました」——ドラッグストアで一番多いその声に、薬剤師として正直に答えます。薬の前に必ず確認してほしい順番があります。

「便秘薬を買いに来ました」——ドラッグストアで最も多い相談のひとつです。
毎日出ない。出てもスッキリしない。便秘薬を買い続けるのが不安。でも病院に行くほどでもない気がする——そんな方に向けて、まず自分でできることを順番にまとめました。
サキさん便秘薬を毎日飲んでいるんですけど、このままで大丈夫なのかなって不安で。
薬剤師たけすた薬の前にできることが意外とあります。便秘の原因はひとつではないので、まず自分のタイプを知るところから始めるのがおすすめです。
薬剤師たけすた薬局長として10年、便秘の相談を毎日のように受けてきました。患者さんに勧めて反応がよかったものは決まっています。順番に紹介します。
便秘の原因は1つじゃない——まず自分のタイプを知る
便秘というと「腸の動きが悪い」というイメージが先行しがちですが、原因は大きく分けて5つあります。タイプによって対処法が変わるため、まず整理しておきます。

| 頻度 | タイプ | 主な特徴 |
|---|---|---|
| ◎ | 食事性便秘 | 食物繊維・水分が少なく、便そのものが作れていない |
| ◎ | 直腸性便秘 | 便意を我慢する習慣で、便意のサインが出にくい |
| ◯ | 弛緩性便秘 | 腸の動きが弱い。高齢者・運動不足の方に多い |
| ◯ | 痙攣性便秘 | ストレスで腸が緊張し、コロコロ便になる。下痢と交互の場合も |
| △ | 薬剤性・器質性 | 薬の副作用や、大腸ポリープ・狭窄など病気が背景にあるもの |
頻度欄は薬局現場で相談を受ける肌感です。混合型がほとんどで、純粋な単一タイプは少ない印象です。
薬剤師たけすた正直に言うと、薬局で相談を受ける便秘の多くは食事性と直腸性の混合型です。腸の動きが悪いというより、便を作る材料そのものが足りていない方が多いんです。
ここを誤ると、刺激性下剤で腸を無理に動かしても、出すべき便が腸にない、という状態になります。
便秘の定義(参考)
「毎日出ないと便秘」と思っている方は多いのですが、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。週3回未満の排便、強いいきみ、残便感、硬い便なども判断材料です。
出典:日本消化器病学会「慢性便秘症診療ガイドライン」2023年つまり2〜3日に1回でも、不快感がなければ正常範囲ということになります。
なぜ「薬の前に」なのか——便秘薬の種類と注意点
便秘薬には大きく分けて「刺激性」と「非刺激性」があります。先に違いを押さえておくと、選び方が変わります。
刺激性下剤(センナ・ビサコジル・ピコスルファートなど)
腸を直接刺激して動かすタイプです。即効性があり、「今夜中に出したい」という場面では確かに頼れる薬です。
ただし長期間にわたって連用すると、腸管神経叢(腸の神経ネットワーク)に影響が出る可能性が指摘されています。「薬を飲まないと出ない」という状態に近づくこともあるため、毎日の使用はできるだけ避けたい薬です。
非刺激性・浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど)
腸に水分を引き込んで便を柔らかくする仕組みで働きます。腸を直接刺激しないため、比較的マイルドと考えられています。
ただし腎機能が低下している方や高齢者では、マグネシウムが体内に蓄積しやすくなる「高マグネシウム血症」に注意が必要です。
「薬で出す」と「自力で出る腸を作る」は別
薬は今困っているときの手段であって、腸そのもののはたらきを取り戻すためのものではありません。
薬剤師たけすた薬の前にやることをやっておくと、薬の量も頻度もぐっと減らせます——これが薬剤師としての本音です。
薬の前にできること——「腸の動き」と「便の材料」の2軸で整える
便秘対処は2つの軸で考えるとシンプルになります。
- 腸の動きを良くする(運動・水分・トイレ習慣・整腸剤)
- 便の材料を整える(食物繊維・もち麦・水溶性食物繊維サプリ)

この2軸を踏まえて、優先度を◎◯△で整理しました。
| 優先度 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ◎ | もち麦ごはんへの置き換え | 白米をもち麦に変えるだけ。水溶性・不溶性が両方摂れる |
| ◎ | 水分1.5〜2L/日 | 朝起きてすぐコップ1杯から |
| ◯ | 水溶性食物繊維サプリ | もち麦で足りない時の補充。患者さんの満足度が一番高い |
| ◯ | 毎日同じ時間にトイレに座る | 朝食後15〜30分が腸の動きやすい時間帯 |
| ◯ | 30分ウォーキング | 10分×3回でも構わない |
| △ | 整腸剤(プロバイオティクス) | 土台が整っていてこそ働きやすい |
順番に解説します。
便の材料を整える——もち麦と水溶性食物繊維
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、便への働き方が違います。
| 種類 | 働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| 不溶性食物繊維 | 便のかさを増やす(便の骨格を作る) | ごぼう・レタス・さつまいも・豆類 |
| 水溶性食物繊維 | 便を柔らかくする・腸内菌のエサになる | もち麦・大麦・イヌリン・きのこ・海藻 |
不溶性が便の骨格、水溶性が便の柔らかさ——このバランスが崩れると便が出にくくなります。「ごぼうやサラダをたくさん食べているのに出ない」という方は、水溶性が足りていないことが多いです。
薬剤師たけすた患者さんに最もよく勧めているのは、もち麦ごはんへの置き換えです。白米を炊くときにもち麦を3割ほど混ぜるだけ。g当たりの水溶性食物繊維がトップクラスで、無理なく毎日の食習慣に組み込めます。
それでも足りない方には水溶性食物繊維サプリ(イヌリン・サンファイバーなど)を提案しています。
薬剤師たけすた半信半疑で始めた方が「これは違う」と驚いてくれることが多く、薬局でも反応が一番嬉しい商品です。
詳しい比較はサンファイバーとイヌリンの薬剤師比較記事、食材ベースで足したい方は食物繊維が豊富な食材TOP10を参照してください。
なお食物繊維の摂取目安は、成人女性18g以上・成人男性21g以上が示されています。多くの日本人がこの基準に届いていません。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版腸の動きを良くする——水分・運動・トイレ習慣
水分は1日1.5〜2Lが目安です。便の70〜75%は水分でできているといわれており、水分が不足すると大腸が便から水分を吸い上げ、便が硬くなります。コーヒーやアルコールは利尿作用があるためカウントしにくく、水か白湯が理想です。
朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲む習慣は、胃大腸反射(食べ物や水が胃に入ると大腸が動く反応)を促す入り口になります。
運動は1日30分のウォーキングが目安です。1日30分以上の身体活動で便通改善が報告されています。デスクワーク中心の方ほど、意識的に動く時間を入れる価値があります。
出典:Alimentary Pharmacology & Therapeutics, 2019年トイレ習慣は意外と効きます。便意がなくても朝食後にトイレに座る、というだけで腸にリズムが戻ってくる方は多いです。便意を我慢する習慣がついている直腸性便秘の方には特に有効です。
なお排便のときは少し前傾姿勢になる「ロダン姿勢」(考える人のポーズ)にすると、直腸と肛門の角度が開いて出やすくなります。足の下に小さなスツールを置くと自然にこの姿勢になります。
整腸剤(プロバイオティクス)は補助として
乳酸菌・ビフィズス菌などの整腸剤は、腸内環境を整えることで腸の動きをサポートする可能性があると考えられています。ただし「整腸剤さえ飲めばOK」ではなく、もち麦・水分・運動という土台が整っていてこそ働きやすくなります。
薬剤師たけすた私が薬局で最初に勧めているのはビオスリーHi錠です。糖化菌・乳酸菌・酪酸菌の3菌種が小腸から大腸まで連携して働く設計で、市販ではこれだけ。詳しい理由は別記事にまとめています。
「お通じのリズムが整ってきた」という変化は、2〜4週間続けてから判断するのがおすすめです。個人差があります。
痙攣性便秘の方は注意——不溶性食物繊維が逆効果のことも
ストレスで腸が緊張する痙攣性便秘の方は、ごぼうやさつまいもなど不溶性食物繊維を急に増やすと、お腹が張って逆に苦しくなることがあります。コロコロ便と下痢を繰り返すタイプの方も同じです。
薬剤師たけすた「便秘にいいと聞いてごぼうサラダを毎日食べたら、お腹が張って余計に苦しい」——薬局でよく聞く相談です。痙攣性のタイプには逆効果のことがあるので、誠実にお伝えします。
このタイプの方には、
- 水溶性食物繊維(もち麦・イヌリン・サンファイバー)を中心に
- 不溶性は少しずつ
- ストレス対策と睡眠の見直しを並行で
という進め方をおすすめしています。お腹の張りが強い方は発酵性の比較記事でサプリの選び方を確認してください。
便の状態でわかる「腸の調子」——黄色く水面に浮く便が健康便のサイン
便秘対処を続けるうえで、自分の進み具合を毎日確認できる指標があります。便そのものの色と浮き沈みです。

薬剤師たけすた私自身、腸を整え始めてから明らかに変わったのが便の状態です。腸内環境が整うと黄色がかった便になり、調子のいい日は水面に浮くくらい空気を含んだ便が出ます。これが健康便のサインです。
逆に黒っぽくて沈みやすく、強烈な臭いがする便は、腸内で悪玉菌優位の発酵が進んでいるサインのことが多いです。色・浮き沈み・臭いの3つは毎日見るだけで腸の状態が読めます。
ただし真っ黒なタール便・血が混じる便は別問題で、必ず受診してください(後述)。
それでも変化がない場合——市販薬の選び方
2〜3週間試しても変化がない場合は、市販薬を検討する段階です。
| 成分・種類 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 酸化マグネシウム | 腸に水分を引き込む(浸透圧性) | 比較的マイルド・長期使用例も多い |
| ラクツロース | 小腸で吸収されず大腸で発酵 | 浸透圧性に働く・お腹が張りやすい場合がある |
| センナ・ピコスルファート | 腸を直接刺激する | 即効性はあるが毎日の使用は避けたい |
まずは非刺激性(酸化マグネシウム系)から、というのが薬剤師の基本方針です。刺激性は旅行前など短期使用にとどめるのが無難です。
ドラッグストアで相談する際は、
- いつから便秘が続いているか
- 現在飲んでいる薬があるか(特に降圧薬・利尿薬・鉄剤など)
- 毎日使っているか、どのくらいの頻度で使っているか
を伝えると、合った薬を提案してもらいやすくなります。
こんな便秘は必ず受診を
⚠️ 以下に当てはまる場合はセルフケアを続けず、消化器内科を受診してください。
- 急に便秘になった(これまで普通だったのに突然変わった)
- 便に血が混じる・黒色便(タール便)がある
- 腹痛・嘔吐を伴う
- 体重減少がある
- 2週間以上セルフケアをしても変化がない
これらは大腸ポリープ・大腸がん・腸閉塞などの病気のサインである可能性があります。「便秘だから」と判断せず、早めに専門医に診てもらうのが安心です。
よくある質問
サキさん毎日お通じがないと便秘ですか?2〜3日に1回でも普通ですか?
薬剤師たけすた毎日でなくても便秘とは限りません。慢性便秘症診療ガイドライン(日本消化器病学会, 2023年)では、回数だけでなく残便感・強いいきみ・便の硬さも判断材料です。2〜3日に1回でも快適に出ていれば正常範囲とされています。
ケンジさん便秘薬を毎日飲んでいます。急にやめても大丈夫ですか?
薬剤師たけすた刺激性下剤を長期使用している方が急にやめると、数日排便がなくなることがあります。生活習慣の土台を整えながら、使用頻度を少しずつ減らす段階的な離脱が安全です。強い腹痛が出たら薬剤師か医師に相談してください。
サキさん食物繊維を意識して摂っているのに、お腹が張って苦しいんです。
薬剤師たけすた不溶性食物繊維を増やしすぎている可能性があります。痙攣性便秘の方は不溶性が逆効果になることもあるので、もち麦やイヌリンなど水溶性中心に切り替えてみてください。
ケンジさん整腸剤と便秘薬は一緒に飲んでもいいですか?
薬剤師たけすた併用しても問題はありません。ただし整腸剤は腸内環境を整える補助、便秘薬は出すための薬と役割が違います。生活習慣を整えながら、便秘薬の頻度を少しずつ減らすのが目標です。
サキさんヨーグルトや納豆を毎日食べているのに便秘が変わりません。
薬剤師たけすた正直に言うと、発酵食品より水溶性食物繊維のほうが反応が早い方は多いです。発酵食品にこだわる前に、もち麦や水溶性食物繊維サプリを足してみてください。腸内菌のエサが増えると、もともと持っている善玉菌が育ちます。
まとめ
- 便秘の原因は1つじゃない。腸の動きと便の材料、2軸で考えるとシンプル
- まず◎の「もち麦ごはん+水分1.5〜2L」から始めるのが一番の近道
- もち麦で足りない時は水溶性食物繊維サプリ。患者さんの満足度が一番高い
- 整腸剤は土台が整ってからの補助役。ビオスリーHi錠が薬剤師としての一押し
- 痙攣性便秘の方は不溶性が逆効果のことも。水溶性中心で進める
- 便秘薬は非刺激性(酸化マグネシウム系)から。刺激性は短期だけに
- 急な便秘・血便・体重減少・腹痛があれば必ず受診を
便の色・浮き沈み・臭いを毎日見ているだけで、腸の状態は十分読めます。薬を増やす前にできることから1つずつ。それで足りないときに、初めて薬の出番です。



