· 薬剤師たけすた · 健康 · 23 min read
薬とサプリは何が違うのか|薬剤師が制度から説明する
薬はなるべく飲みたくない。サプリなら体にやさしそう。そう感じて選んでいる方は多いと思います。売り場は隣どうしでも、国の確かめ方は大きく違います。承認の仕組みから、迷った時の判断軸までを整理しました。

薬はなるべく飲みたくない。でもサプリなら、食べ物の延長だから体にやさしそう。
ドラッグストアでは、薬の棚のすぐ隣にサプリが並んでいます。粒の形も、瓶の見た目もよく似ています。「結局、何が違うの?」と思ったことがある方は多いはずです。
サキさん薬もサプリも、どっちも錠剤ですよね。サプリのほうが自然な感じがして、つい選んじゃうんです。
薬剤師たけすた見た目が似ているので、そう感じるのは自然なことです。そのうえで、売り場に並ぶまでに国がどこまで中身を確かめたか、という点に大きな違いがあります。
先に結論を書きます。薬は、売る前に国が「効き目」と「安全性」と「品質」を審査して承認したものです。サプリは食品なので、原則として売る前の国の審査がありません。
違いは「成分が強いか弱いか」に加えて、「誰が、いつ、何を確かめたか」にあります。この記事では、その仕組みを順番に見ていきます。
薬剤師の私もサプリは飲んでいます
最初にお伝えしておくと、私はサプリを否定する立場ではありません。
薬剤師たけすた私自身、海外のマルチビタミンを8年以上飲んでいます。含有量が多いので、半分に割って飲んでいます。
そのうえで、薬とサプリは同じ棚に並んでいても、確かめ方の違う別の物として扱っています。
薬とサプリの違いは、仕組みを一度知っておくと、選ぶ時の迷いがぐっと減ります。
薬とサプリは「法律の入口」が違う
薬は「医薬品医療機器等法」で決まる
薬の扱いを決めているのは、医薬品医療機器等法(薬機法)という法律です。この法律では、医薬品を「病気の診断・治療・予防に使うことが目的の物」や「体の構造や働きに影響させることが目的の物」などと定めています。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第2条新しい薬は、何段階もの人での試験(治験)を経てデータを集めます。そのデータを国の審査機関(医薬品医療機器総合機構・PMDA)が確かめ、厚生労働大臣が承認して初めて販売できます。
新しい薬は、開発を始めてから承認されるまでに、長い年月がかかります。
出典:日本製薬工業協会「くすりができるまで」/医薬品医療機器総合機構「承認審査業務の概要」
サプリは「食品」として扱われる
一方、サプリには法律上の決まった定義がありません。厚生労働省も、「健康食品」と呼ばれるものには法律上の定義が無いと説明しています。
出典:厚生労働省「『健康食品』のホームページ」つまり、サプリは錠剤やカプセルの形をしていても、法律の上では食品の仲間です。食品は食品衛生法や食品表示法のルールで管理されていて、売る前に国が効き目を審査する仕組みは、原則としてありません。

4つの区分を並べると違いが見える
「薬」と「サプリ」の2つに分けると、間にあるものが見えにくくなります。国の関わり方で4つに分けて並べます。
| 区分 | 売る前の国の審査 | パッケージに書けること | 副作用の救済制度 |
|---|---|---|---|
| 医療用医薬品 (病院の薬) | ◎ 治験データを国が審査して承認 | 承認された効能・効果 | ◎ 対象 (一部の薬を除く) |
| 一般用医薬品 (市販薬) | ◎ 国(一部は都道府県)が審査して承認 | 承認された効能・効果 | ◎ 対象 (一部の薬を除く) |
| 保健機能食品 (トクホ 機能性表示食品 栄養機能食品) | ◯ トクホは国が個別に審査 △ 機能性表示食品は届出 △ 栄養機能食品は基準を満たすだけ | 決められた範囲の「機能」の表示 (病気の治療・予防は書けない トクホの一部に例外あり) | × 対象外 |
| いわゆる健康食品 (多くのサプリ) | × なし | 機能の表示はできない | × 対象外 |
右の列の「副作用の救済制度」は、あまり知られていない違いです。薬を正しく使ったのに、入院が必要になるほどの副作用が出た場合、医療費などが給付される国の制度があります。この制度の対象は医薬品で、サプリや健康食品は対象に入っていません。
ケンジさん市販薬でも、その救済制度の対象になるんですか?
薬剤師たけすたはい、市販薬も対象です(一部の薬を除きます)。レシートや購入した薬の箱を残しておくと、いざという時の手続きで役に立ちます。
トクホ・機能性表示食品・栄養機能食品の細かい違いは、トクホと機能性表示食品の違いで詳しく整理しています。
市販薬の中にも「段階」がある
同じ市販薬でも、副作用などへの注意の度合いで区分が分かれています。店頭で薬剤師が説明する薬と、そうでない薬があるのはこのためです。
| 区分 | 売れる人 | 説明のルール |
|---|---|---|
| 要指導医薬品 | 薬剤師だけ | 書面などを使って、使う本人に説明 |
| 第1類医薬品 | 薬剤師だけ | 書面を使って説明 |
| 第2類医薬品 | 薬剤師か登録販売者 | 説明は努力義務 |
| 第3類医薬品 | 薬剤師か登録販売者 | 説明の義務はなし(相談されたら応じる) |
サプリには、こうした「誰が売り、どこまで説明するか」の決まりはありません。コンビニでもネットでも、説明なしで買えます。手軽な反面、合う・合わないを確かめるのは自分になります。
サプリの側にも守られている線がある
ここまで読むと「サプリは何でもありなの?」と不安になるかもしれません。サプリの側にも、法律で守られている線があります。
薬の成分は食品に入れられない
国は「専ら医薬品として使用される成分」のリストを作っています。このリストに載っている成分は、食品に入れて売ることができません。
出典:厚生労働省「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年通知・いわゆる46通知)病気の名前を出して売ってはいけない
食品は、トクホの一部で国が認めた例外を除き、「病気の予防になる」「〇〇病に」のような書き方ができません。こうした表示をすると、食品であっても薬機法違反(無承認の医薬品の広告)になる可能性があります。
広告の見分け方は、怪しい健康食品を見抜く5つの基準で詳しく書いています。
機能性表示食品は報告のルールが強まった
2024年9月から、機能性表示食品を売る事業者は、健康被害の情報を知った時に行政へ報告することが義務になりました。その後も見直しは段階的に進み、錠剤やカプセルの形の機能性表示食品は、製造管理の基準(GMP)を守ることも求められるようになっています。
出典:消費者庁「機能性表示食品制度の見直しについて」(2024年)「サプリは体にやさしい」と言い切れない理由
サプリが体にやさしそうに感じるのは、食べ物に近いイメージがあるからだと思います。その感覚にも一理あります。食品として長く食べられてきた成分も多いからです。
そのうえで、薬剤師として押さえておいてほしい点が2つあります。
1. 量と品質のばらつき
医薬品は、決められた製造管理の基準(GMP)を守って作ることが法律で義務になっています。いわゆる健康食品では、上の機能性表示食品などを除き、この基準は事業者が任意で取り入れるものです。
そのため、同じ成分名でも製品によって中身の量や品質にばらつきがある可能性があります。第三者の認証マークがある製品を選ぶのは、ここを補う1つの方法です。
2. 薬との飲み合わせ
サプリでも、薬との飲み合わせで問題が起きることがあります。よく知られている例を挙げます。
- ⚠️ ビタミンKを多く含む製品(青汁・クロレラなど)は、血を固まりにくくする薬(ワルファリン)の働きを弱める可能性があります
- ⚠️ セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、一部の薬の働きを弱める可能性が報告されています
薬剤師たけすた薬局で「飲んでいるサプリはありますか?」と聞くのは、この飲み合わせを確かめるためです。お薬手帳に、飲んでいるサプリの名前も書いておくと話が早いです。
迷った時の判断軸は3つ
薬とサプリのどちらを選ぶか迷った時は、次の3つの問いを順番に考えてみてください。

問い1:何のために使うか
体に気になる症状があって、それを何とかしたいなら、まず薬か医師・薬剤師への相談が入口です。症状が強い時や長く続く時は、市販薬で様子を見続けずに受診してください。食事で足りない栄養を補いたいなら、サプリが選択肢になります。
サプリは「足りない分を補う」役です。症状を何とかしたい時の代わりにはなりません。
問い2:誰が確かめたか
パッケージを見て、次のどれに当たるかを確かめます。
- ✅ 「医薬品」の表示がある → 国が審査して承認
- ✅ 「特定保健用食品」のマーク → 国が個別に審査して許可
- ✅ 「機能性表示食品」の表示と届出番号 → 事業者が根拠を届け出
- ✅ どれも書いていない → 確かめたのは作った会社だけ
問い3:困った時どうなるか
体に合わなかった時に、救済制度があるか、相談先があるかも判断材料です。医薬品なら副作用の救済制度があり、薬剤師に相談できる仕組みも整っています。
サプリで体調の変化を感じた時は、まず飲むのをやめて、医師か薬剤師に製品名を伝えて相談してください。
本音:サプリとの付き合い方
薬剤師たけすた正直に言うと、「薬は怖い、サプリは安心」と感じる気持ちはよく分かります。そのうえで、どちらも体に入る物なので、確かめた人と中身を見て選んでほしいです。
選ぶ時の目安としては、海外製なら第三者の品質認証があるか、国内製なら機能性表示食品の届出内容を確かめる方法があります。含有量が多い製品は、表示されている1日の目安量と、ほかに飲んでいるサプリとの合計量を確かめ、迷う時は薬剤師に製品名を見せて相談してください。
サプリは、食事を整えたうえでの補完役です。そう位置づけておくと、期待しすぎてお金を使いすぎることも、逆に怖がりすぎることも減ります。
よくある質問
サキさんサプリのほうが、薬より副作用が少ないですよね?
薬剤師たけすた食べ物に近いので、そう感じる方は多いと思います。そのうえで、いわゆる健康食品には、薬のような売る前の安全性審査や副作用の救済制度がありません。成分によっては体質に合わないこともあるので、変化を感じたら飲むのをやめて、製品名を伝えて医師か薬剤師に相談してください。
ケンジさん病院の薬を飲んでいます。サプリを足しても大丈夫ですか?
薬剤師たけすた組み合わせ次第なので、始める前に薬剤師に製品名を見せてください。ビタミンKとワルファリンのように、薬の働きに影響する組み合わせが知られています。妊娠中・授乳中の方や、お子さまに飲ませる場合も、始める前に医師か薬剤師に相談してください。
サキさん海外のサプリは、日本のサプリと扱いが違うんですか?
薬剤師たけすた海外で食品として売られていても、日本では成分や表示で扱いが決まります。日本で医薬品の成分とされる物が入っていると、食品ではなく無承認の医薬品として扱われます。成分表示を確かめ、分からない時は薬剤師に製品名を見せて相談してください。
ケンジさん同じビタミンでも、薬とサプリがあるのはなぜですか?
薬剤師たけすた使う目的と量、確かめ方が違うからです。決められた効能・効果(症状をやわらげる、特定の時期の栄養補給など)について国の承認を受けたものが薬(ビタミン剤には、薬に近い扱いの「指定医薬部外品」もあります)、栄養を補う目的で食品として売られているものがサプリです。
まとめ
- 薬は、売る前に国が効き目・安全性・品質を審査して承認したもの
- サプリは法律上は食品で、原則として売る前の国の審査はない
- 間にトクホ・機能性表示食品などがあり、国の関わり方は段階的に違う
- 副作用の救済制度は医薬品が対象で、サプリは対象外
- 迷ったら「何のために使うか」「誰が確かめたか」「困った時どうなるか」の3つで考える
薬とサプリは、どちらが良い・悪いで分けるものではありません。確かめ方の違う物として知っておくと、パッケージを見る目が少し変わると思います。



