· 薬剤師たけすた · 健康 · 25 min read
マグネシウムと便通|薬剤師が市販薬と食品の違いを整理
便秘薬の酸化マグネシウムも、サプリのマグネシウムも、海藻やナッツに含まれるマグネシウムも、名前は同じです。ただ、使う目的と気をつけることは変わります。腎臓への注意もあわせて整理しました。

「便秘には酸化マグネシウムがやさしいらしい」。そう聞いて、市販の便秘薬を手に取った方もいると思います。
一方で、サプリの売り場にもマグネシウムが並んでいます。海藻やナッツにも多いと聞きます。薬もサプリも食べ物も、同じマグネシウムならどれで摂っても同じでは——そう感じるのは自然なことです。
サキさん便秘薬のマグネシウムと、サプリのマグネシウムって同じものですよね。食べ物でたくさん摂れば、薬はいらない気もしていて。
薬剤師たけすたどれもマグネシウムなのは、その通りです。そのうえで、使う目的と量、気をつけたい人が違います。特に腎臓の働きは、薬として使う前に確認してほしいポイントです。
この記事では、市販薬の酸化マグネシウムと、食品やサプリからのマグネシウムの違いを整理します。あわせて、薬剤師として一番伝えたい腎臓への注意も書きます。
先に結論:同じマグネシウムでも役割が3つに分かれる
名前は同じでも、どこから摂るかで位置づけが変わります。
| 摂り方 | 位置づけ | 使う目的 | 量の考え方 |
|---|---|---|---|
| 市販の便秘薬 酸化マグネシウム | 医薬品 | 腸に水分を集めて、硬い便をやわらかくする | 説明書の量と回数を守る |
| サプリメント | 食品 | 食事で足りない分を補う。便通への働きはうたえない | 食品以外からは成人で1日350mgまで |
| 毎日の食事 | 食品 | 骨や筋肉、神経の働きに使う材料として摂る | 上限は設けられていない |
便通のために使うのは、医薬品の酸化マグネシウムです。サプリと食事のマグネシウムは、体に必要なミネラルを補う位置づけになります。名前が同じでも、目的が変われば選び方と気をつけることも変わります。
私が「マグネシウムはやさしい薬」と言い切らない理由
酸化マグネシウムは、日本消化管学会の便秘症の診療ガイドラインでも、刺激性の下剤より先に検討される非刺激性の便秘薬の1つとして挙げられています。便が硬くて出しにくい方に、よく名前が挙がる薬です。
出典:日本消化管学会編「便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症」腸への刺激が少なく続けやすい、というのはその通りです。それに加えて、体の中にたまることがある薬でもある。この面も一緒に知っておいてほしいと思っています。
私自身は、10年かけて腸活の土台を食事から整えてきました。いまも白米にもち麦を混ぜたごはんを食べています。薬に頼る前に、便の材料になる食物繊維と水分を整える。この順番は、マグネシウムの話でも変わらないと考えています。
酸化マグネシウムのしくみ——腸に水分を集めて便をやわらかくする
酸化マグネシウムは、胃酸と反応して形を変えながら腸へ進みます。腸では体に吸収されにくい形になり、まわりから水分を引き寄せます(浸透圧性下剤)。
水分を含んだ便はやわらかくなり、かさも増えます。その刺激で腸が自然に動きやすくなる、というのが基本の考え方です。腸の神経を直接刺激するタイプとは、ここが違います。
胃酸を抑える薬と一緒だと、働きが弱まることがある
最初に胃酸と反応する薬なので、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬・H2ブロッカー)を飲んでいる方では、便をやわらかくする働きが弱まる可能性があると、国内の研究で報告されています。
「前より出にくくなった」と感じても、量を自分で増やすのは避けてください。飲んでいる薬を伝えて、薬剤師か医師に相談するのが近道です。
水分もセットで考える
腸に水分を集める薬なので、体の水分が足りないと働きが出にくいと考えられています。飲むときはコップ1杯ほどの水と一緒に。日中のこまめな水分補給も意識してください。
いちばん伝えたいこと:腎臓とマグネシウムの関係
体に吸収されたマグネシウムは、主に腎臓から尿として外に出ていきます。腎臓がしっかり働いていれば、余った分は捨てられます。働きが落ちていると捨てきれず、血液中のマグネシウムが高くなることがあります(高マグネシウム血症)。
酸化マグネシウムは腸で吸収されにくい薬ですが、一部は体に入ります。腎臓の働きが落ちている方や、高齢の方が毎日長く続けている場合は、その一部が少しずつ積み重なることがあります。

買う前に相談してほしい人
⚠️ 次に当てはまる方は、市販の酸化マグネシウムを買う前に医師か薬剤師に相談してください。
- 腎臓の働きが落ちていると言われたことがある
- 高齢の方
- 長いあいだ毎日飲み続けている
- 説明書の量より多く飲んでいる
- 活性型ビタミンD3の薬(骨粗しょう症などで使われる)を飲んでいる
- 妊娠中、または妊娠しているかもしれない
- ほかの病気で医師の治療を受けている
見落とされやすいのは、腎臓の働きに問題がない方や、通常の量以下の方でも起きた例が報告されている点です。医療者向けにも、長く使う場合や高齢の方では血液中のマグネシウムを定期的に測るよう、注意喚起が繰り返し出されています。
出典:厚生労働省 酸化マグネシウム製剤の「使用上の注意」改訂(2015年10月)、酸化マグネシウム製剤 製造販売会社「適正使用に関するお願い —高マグネシウム血症—」(2020年8月・医薬品医療機器総合機構〈PMDA〉ウェブサイト掲載)初期のサインを知っておく
| サイン | 具体的には |
|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | 食べていないのにむかむかする、吐いてしまう |
| 脈が遅い | 脈がゆっくりになる |
| 力が入らない | 体がだるく、手足に力が入りにくい |
| 強い眠気 | 日中もうとうとする、ぼんやりしている |
こうしたサインが出たら、酸化マグネシウムをいったん中止して医療機関を受診してください。高齢のご家族の場合、本人が「年のせい」と思って口にしないこともあります。周りの方が気づいてあげてください。
ケンジさん便秘薬でそんなことが起きるんですね。うちの母も、病院で酸化マグネシウムをもらっています。
薬剤師たけすた処方で長く使う場合は、血液検査で確認しながら続けることが勧められています。気になるサインがあれば、次の受診日を待たずに連絡してください。市販薬を自己判断で長く続けている場合も、一度相談してもらえると安心です。
飲み合わせも確認しておきたい
酸化マグネシウムは、ほかの薬とくっついて相手の吸収を落とすことがあります。逆に、組み合わせによってはマグネシウムがたまりやすくなります。
| 一緒に使うもの | 起きること | 対処の目安 |
|---|---|---|
| 一部の抗菌薬 テトラサイクリン系 ニューキノロン系 | 抗菌薬の吸収が落ちる | 飲む時間をずらす |
| 骨粗しょう症の薬 ビスホスホネート | 相手の薬の吸収が落ちる | 飲む時間をずらす |
| 活性型ビタミンD3の薬 | マグネシウムの吸収が増え、たまりやすくなる | 医師と血液検査で確認 |
| 胃酸を抑える薬 | 酸化マグネシウムの働きが弱まる可能性 | 量を自己判断で増やさない |
| 大量の牛乳 カルシウム剤 | 血液中のカルシウムが高くなることがある(ミルクアルカリ症候群) | 大量に続けない |
ずらす時間の目安は、相手の薬によって変わります。処方薬を飲んでいる方が市販の便秘薬を選ぶときは、お薬手帳を持って相談するのが一番早い方法です。下剤全体の飲み合わせは市販の下剤は何が違うのかでも整理しています。
食品からのマグネシウム——体の材料として毎日少しずつ
マグネシウムは、骨や歯をつくり、筋肉や神経の働き、体の中の多くの酵素の働きに関わるミネラルです。体が毎日使う材料として欠かせない栄養素です。
食事摂取基準では、成人の1日の推奨量を年齢と男女で分けて決めています。ご自分の年齢の行を見てください。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 340mg | 280mg |
| 30〜49歳 | 380mg | 290mg |
| 50〜64歳 | 370mg | 290mg |
| 65〜74歳 | 350mg | 280mg |
| 75歳以上 | 330mg | 270mg |

| 食品のグループ | 例 | 一緒にとれるもの |
|---|---|---|
| 海藻 | あおさ ひじき わかめ | 食物繊維 |
| 大豆製品 | 納豆 豆腐 | たんぱく質 食物繊維(納豆) |
| ナッツ類 | アーモンド ごま | 食物繊維 脂質(食べすぎに注意) |
| 精製度の低い穀物 | 玄米 もち麦 | 食物繊維 |
| 緑の葉物野菜 | ほうれん草 | 食物繊維 |
通常の食品から摂るマグネシウムには、耐容上限量が設けられていません。上限が決められているのは、サプリや強化食品など通常の食品以外から摂る分で、成人では1日350mgです。多く摂ると下痢を起こすことがあるためです。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」ただし、腎臓病で食事の指導を受けている方は、その指示を優先してください。
マグネシウムのサプリで便通を、と考えたとき
手軽なサプリで何とかしたい、と考えるのは自然なことです。そのうえで知っておいてほしいのは、サプリは食品の扱いで、便通への働きをうたえるものではないという点です。
便が硬くて困っているなら、まず食物繊維と水分の見直しから。それでも続くときに、医薬品の酸化マグネシウムを検討する流れが筋が通ります。
もう1つ気をつけたいのが量の重なりです。便秘薬の酸化マグネシウムを飲んでいる時にサプリを足すと、体に入るマグネシウムの量が重なります。腎臓の心配がある方は、サプリを足す前に相談してください。
状況別:どこから考えるか
薬局で聞かれたときの、一般的な考え方の整理です。持病や飲んでいる薬によって答えは変わります。
| 状況 | 目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 便は出ているが、食事が偏りがち | ◎ 食事から | 海藻や大豆製品、穀物を足す。薬やサプリは急がない |
| 便が硬くて出しにくい日が続く | ◎ 食物繊維と水分から | 便の材料を先に整える |
| 食事を見直しても硬い便が続く | ◯ 市販の酸化マグネシウム | 説明書の量と期間を守る。だらだら続けない |
| 市販の便秘薬を使っても良くならない | △ 相談してから | 説明書の期間を目安に、続けずに医師か薬剤師に相談 |
| 便に血が混じる 強い腹痛がある 急に便通が変わった 体重が減ってきた | × 薬より先に受診 | 便秘の陰に病気が隠れていることがある。医療機関を受診 |
| 処方薬を飲んでいる | △ 相談してから | お薬手帳で飲み合わせを確認 |
| 高齢の方 | △ 相談してから | マグネシウムがたまりやすい。長く使うなら血液検査を |
| 腎臓の働きが落ちていると言われた | × 自己判断で使わない | 主治医に相談 |
| 吐き気や強い眠気が出た | × すぐ中止 | 医療機関を受診 |
薬剤師としての本音
酸化マグネシウムは、量と期間を守って使えば、便秘のつらい日の選択肢になる薬です。刺激性の下剤を毎日使っている方にとっても、医師や薬剤師と相談しながら移っていける選択肢の1つです。
そのうえで気になっているのが、「やさしい薬」という印象だけが広まっていることです。腸への刺激が少ないことと、体にたまらないことは、別の話です。
薬剤師たけすたやめてほしいわけではありません。困っている日に薬に助けてもらうのは大事なことです。長く使うなら、腎臓と飲み合わせだけは一度確認してほしい。お願いしたいのはそれだけです。
マグネシウムは食事から、便の材料は食物繊維と水分から。薬は足りない部分を補う手段。この順番で考えると、棚の前で迷いにくくなります。自宅でできることの順番は便秘に薬を使う前に試したい順番にまとめています。
よくある質問
サキさんマグネシウムのサプリを飲めば、便秘薬はいらなくなりますか。
薬剤師たけすたサプリは食品の扱いなので、便秘薬の代わりにはなりません。便が硬い日が続くなら食物繊維と水分を先に整え、それでも続くときに医薬品を検討してください。
ケンジさん海藻やナッツをたくさん食べると、マグネシウムの摂りすぎになりませんか。
薬剤師たけすた通常の食品から摂る分には、耐容上限量は設けられていません。毎日の食事に取り入れて大丈夫です。ただし腎臓病で食事の指導を受けている方は、その指示を優先してください。
サキさん市販の酸化マグネシウムを毎日飲んでいます。このまま続けても平気ですか。
薬剤師たけすた説明書の期間を過ぎて自己判断で続けているなら、一度相談してください。高齢の方や腎臓が心配な方は、血液検査で確認しながら使うのが安全です。吐き気や強い眠気などのサインがあれば、すぐに中止して受診してください。
ケンジさん腎臓が少し弱いと言われています。酸化マグネシウムは使わないほうがいいですか。
薬剤師たけすた自己判断では使わず、主治医に相談してください。マグネシウムがたまりやすく、腎臓の状態によって使えるかどうかが変わります。便の悩みがあることも、受診のときに伝えてください。
サキさん子どもの便秘に、大人用の酸化マグネシウムを少なめにして飲ませてもいいですか。
薬剤師たけすた大人用の量を自分で減らして飲ませるのはやめてください。必ず小児用の製品(説明書にお子さんの年齢の量が書かれたもの)を使用してください。もしくは医師、薬剤師にご相談ください。お腹の痛みや吐き気がある時、便秘が続く時は、薬より先に小児科を受診してください。
まとめ
- 便通のために使うのは医薬品の酸化マグネシウム。サプリと食事のマグネシウムは、体の材料を補う位置づけ
- 酸化マグネシウムは腸に水分を集めて便をやわらかくする。水分補給もセットで
- 腎臓の働きが落ちている方、高齢の方、長く飲んでいる方は高マグネシウム血症に注意
- 腎臓に問題がなくても、通常の量でも起きた例がある。吐き気・脈が遅い・力が入らない・強い眠気が出たら中止して受診
- 抗菌薬や骨粗しょう症の薬などとは飲み合わせを確認。お薬手帳を持って相談
- 通常の食品から摂る分には耐容上限量が設けられていない。サプリなど食品以外から摂る分は成人で1日350mgまで。腎臓病で食事の指導を受けている方はその指示を優先
- 便の材料は食物繊維と水分。薬は足りない部分を補う手段
同じ「マグネシウム」という名前でも、薬とサプリと食事では役割が変わります。棚の前で迷ったら、「これは便のための薬か、体の材料を補う食品か」を一度考えてみてください。わからなければ、その場で薬剤師に聞いてください。



