· 薬剤師たけすた · 健康 · 17 min read
短鎖脂肪酸とは|薬剤師が腸内細菌のつくる成分を整理
腸活の話でよく出てくる「短鎖脂肪酸」。酢酸・プロピオン酸・酪酸の3つの違いと、食物繊維がエサになってつくられる流れを、研究で報告されている範囲で整理します。

腸活の記事や食物繊維の商品の説明を読んでいると、「短鎖脂肪酸」という言葉がよく出てきます。大事そうなのは伝わってくるけれど、結局どんなものなのかは分かりにくいですよね。
サキさん短鎖脂肪酸って、よく見かけるんですけど、食べ物に入っている栄養なんですか?
薬剤師たけすたお酢などの食べ物にも少しは入っています。それに加えて、腸で働く短鎖脂肪酸の多くは、お腹の中の菌がつくります。食物繊維が菌のエサになって、その結果できるのが短鎖脂肪酸です。
この記事では、短鎖脂肪酸がどうやってできるのか、3つの種類は何が違うのかを順番に整理します。研究で報告されていることも紹介しますが、まだ分かっていない部分も多いので、その線引きも一緒に書いておきます。
短鎖脂肪酸は「腸内細菌がつくる酸」
短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維などを分解(発酵)してつくる酸(有機酸)の仲間です。「短鎖」は、骨組みになる炭素のつながりが短い、という意味です。
腸の中でできる量が多いのは、次の3つです。
- 酢酸(さくさん)
- プロピオン酸
- 酪酸(らくさん)
酢酸は、お酢の酸っぱさのもとと同じ成分です。名前だけ聞くと難しそうですが、身近なものの仲間だと思うと少し親しみがわくと思います。
食物繊維が短鎖脂肪酸になるまでの流れ
食物繊維は、人の消化酵素ではほとんど分解できません。そのため胃や小腸を通りぬけて、大腸まで届きます。
大腸には、たくさんの腸内細菌がすんでいます。この菌たちが、届いた食物繊維をエサとして分解し、その時にできるのが短鎖脂肪酸です。

サキさんじゃあ、食物繊維ならどれでも同じように短鎖脂肪酸になるんですか?
薬剤師たけすたどれもエサにはなりますが、菌に分解されやすいかどうかは種類で違います。水に溶ける食物繊維(水溶性)は分解されやすいものが多く、溶けない食物繊維(不溶性)は分解されにくいものが多いとされています。
水溶性と不溶性の違いは、水溶性と不溶性の食物繊維はどう違うかで詳しく整理しています。
食物繊維のほかに、消化されにくいでんぷん(レジスタントスターチ)や、オリゴ糖も腸内細菌のエサになります。
酢酸・プロピオン酸・酪酸の違い
3つとも腸内細菌がつくる点は同じです。それに加えて、つくられたあとにどこで使われるかが少しずつ違います。
| 名前 | 大腸でできる量 | 主にどこで使われるか |
|---|---|---|
| 酢酸 | いちばん多い | 血液に乗って肝臓や 体のあちこちへ運ばれる |
| プロピオン酸 | 酪酸と同じくらい | 主に肝臓へ運ばれ 糖をつくる材料などに使われる |
| 酪酸 | プロピオン酸と同じくらい | 大腸の粘膜の細胞が エネルギー源として使う |
人の大腸の中では、酢酸・プロピオン酸・酪酸がおおよそ 6:2:2 の割合でできているという報告があります。ただし、食べたものや腸内細菌の顔ぶれによって変わるとされています。
出典:Cummings JH et al., “Short chain fatty acids in human large intestine, portal, hepatic and venous blood”, Gut, 1987年

酪酸が注目される理由
3つの中でよく話題になるのが酪酸です。大腸の粘膜の細胞は、酪酸を主なエネルギー源として使っていると報告されています。
出典:Roediger WE, “Role of anaerobic bacteria in the metabolic welfare of the colonic mucosa in man”, Gut, 1980年
酪酸をつくる菌は、まとめて「酪酸菌」と呼ばれます。
研究で報告されていること
短鎖脂肪酸については、ここ十数年でたくさんの研究が出てきました。代表的なものを、研究の段階と一緒に並べます。
| 報告されていること | どんな研究か |
|---|---|
| 腸のホルモン(GLP-1)が出る仕組みに関わる | マウスと腸の細胞を使った研究 |
| 酪酸と、腸の免疫の細胞(制御性T細胞)との関係が調べられている | マウスを使った研究 |
GLP-1は、食後に腸から出るホルモンの1つです。短鎖脂肪酸が、腸の細胞にある受け皿(受容体)を通して、このホルモンが出る仕組みに関わっていると、動物と細胞の研究で報告されています。
⚠️ ここで紹介した研究は、動物や細胞を使ったものが中心です。人の体で同じことがどのくらい起きるのかは、まだ研究が続いている段階です。「短鎖脂肪酸が増えれば体の調子がこう変わる」と言い切れるところまでは、分かっていません。
ケンジさんじゃあ、短鎖脂肪酸のことは気にしなくていいんですか?
薬剤師たけすた気にする価値はあると思います。ただ、短鎖脂肪酸だけを狙うより、腸内細菌のエサになる食物繊維を毎日の食事でとる、という考え方のほうが続けやすいです。
私が腸活で大事にしていること
私は腸活を10年ほど続けています。勉強するうちに注目したのが、腸内細菌がつくる成分でした。その代表が、この記事の短鎖脂肪酸です。
薬剤師たけすた正直に言うと、発酵食品を足すことより、水溶性食物繊維をとるほうが大事だと私は考えています。善玉菌はもともと腸にいるので、エサを届けて育てるほうが近道だと思っているからです。
薬剤師たけすたぬか漬けは、毎日食べることが続きませんでした。酪酸菌は、酪酸菌を配合した整腸剤を10年飲み続けて補っています。あくまで私の場合の話で、誰にでも合うとは限りません。
薬局で「何を食べたらいいか」と聞かれた時は、白米にもち麦を混ぜることを強くすすめています。いつものごはんを炊くだけで、水溶性食物繊維が無意識にとれるからです。
短鎖脂肪酸は体の中でできて使われるものなので、毎日の量を手軽に確かめる方法はありません。腸活はこだわりすぎるとキリがないので、私は「絶対やる」ではなく「できるだけやる」くらいで続けています。
食事でできること
短鎖脂肪酸のもとになるエサは、毎日の食事でとれます。次のような食品に、腸内細菌のエサになる食物繊維が含まれています。
- 主食:もち麦・大麦・玄米
- 豆:納豆・大豆・いんげん豆
- 海藻:わかめ・昆布・もずく
- 野菜:ごぼう・玉ねぎ・オクラ
- 果物:りんご・バナナ・キウイ
1つの食品にしぼるより、いろいろな種類をとるほうが、いろいろな菌のエサになります。腸内細菌の顔ぶれは人によって違うので、同じものを食べても、できる短鎖脂肪酸の量には個人差があるとされています。
出典:den Besten G et al., Journal of Lipid Research, 2013年
💡 食物繊維を急に増やすと、分解の時にできるガスでお腹が張ることがあります。少しずつ増やして、体を慣らしていくのがおすすめです。増やす順番は食物繊維を増やす順番にまとめています。
商品の情報
ここからは、食物繊維を食事だけでとりにくい時の選択肢を並べます。「自己使用品」の印は、私が実際に使ったことのある商品です。どれも、とったからといって体の中の短鎖脂肪酸が増えると確かめられた商品ではありません。リンク先は楽天とAmazonです。
キラリモチ(もち麦)
白米に混ぜて炊くだけ。水溶性食物繊維を毎日の主食から摂れる
β-グルカン(水溶性食物繊維)を含むもち麦です。白米の一部をもち麦に置き換えると、その分だけ食物繊維が増えます。含まれる量は製品によって違うので、袋の栄養成分表示をご確認ください。楽天で購入可能です。
※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。商品紹介は薬剤師としての個人的見解であり、効果・効能を保証するものではありません。 既往症・服薬中の方は必ず主治医・薬剤師にご相談ください。

サンファイバー
グァー豆からつくった、水に溶ける食物繊維の粉
グァー豆由来の水溶性食物繊維(グァーガム分解物)の粉です。味やにおいが少なく、飲み物や汁物に溶かして使えます。1日の量は商品の表示を確認してください。持病がある方や薬を飲んでいる方は、使う前に医師か薬剤師にご相談ください。
※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。商品紹介は薬剤師としての個人的見解であり、効果・効能を保証するものではありません。 既往症・服薬中の方は必ず主治医・薬剤師にご相談ください。

イヌリン(食物繊維サプリ)
水に溶ける食物繊維イヌリンの粉
水溶性食物繊維のイヌリンの粉です。白湯や飲み物に溶かして使えます。とり始めはお腹が張ることがあるので、少ない量から試してください。1日の量は商品の表示を確認してください。持病がある方や薬を飲んでいる方は、使う前に医師か薬剤師にご相談ください。
※本記事はアフィリエイトリンクを含みます。商品紹介は薬剤師としての個人的見解であり、効果・効能を保証するものではありません。 既往症・服薬中の方は必ず主治医・薬剤師にご相談ください。
食物繊維の粉どうしの違いは、食物繊維サプリの発酵分解率で整理しています。
よくある質問
サキさんお酢を飲めば、短鎖脂肪酸をとったことになりますか?
薬剤師たけすた酢酸という同じ成分をとったことにはなります。ただ、腸内細菌が大腸でつくる短鎖脂肪酸とは、できる場所が違います。腸内細菌のエサという意味では、食物繊維をとることを考えるのが分かりやすいです。
ケンジさん発酵食品を食べれば、短鎖脂肪酸は増えますか?
薬剤師たけすた発酵食品だけで増えるかどうかは、はっきりとは分かっていません。発酵食品は菌を外から入れるもので、短鎖脂肪酸をつくるエサは食物繊維です。菌とエサは別々に考えると整理しやすくなります。
菌とエサの違いは、プレバイオティクスとプロバイオティクスの違いで詳しく書いています。
サキさん子どもにも食物繊維の粉を使っていいですか?
薬剤師たけすたまずは、ごはんや野菜など毎日の食事から考えるのが安心です。粉を使いたい時は、必ず小児用の製品を使用してください。もしくは医師、薬剤師にご相談ください。製品の表示に子どもの量が書かれていない物は使わないでください。
まとめ
- 短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維などを分解(発酵)してつくる有機酸
- 主なものは酢酸・プロピオン酸・酪酸の3つ。大腸の中ではおおよそ 6:2:2 という報告がある
- 酪酸は、大腸の粘膜の細胞がエネルギー源として使うと報告されている
- ホルモンや免疫との関わりの研究は、動物や細胞を使ったものが中心で、人ではまだ研究が続いている
- 短鎖脂肪酸だけを狙うより、エサになる食物繊維をいろいろな食品から毎日とる



